第一話 運命の日
今週のお題「寿司」
お題が「寿司」ということでこの間、友人と回転寿司に行った話をしようと思う。
私と友人には共通の目的があった。その目的のためにこの寿司屋に訪れたのだ。
店内は薄暗く、まだ昼前ということもあって人がいない。
店の奥、店内を見渡せる位置にある厨房には一人の男性がおり、その人物を見た瞬間一目で私たちは確信した。
この人だ───。
この人こそが、あの伝説の……。
「らっしゃい!」
快活な声を発した後、彼は何かに気づいたような顔をして意味ありげな笑みを浮かべた。
それはまさしく強者の笑みであった。
「へへ、珍しいお客さんだ」
どこか遠くを見るかのような彼に、若干のもどかしさを感じる。
彼が口を開くよりも先に、私たちは精一杯の誠意を込めて頭を下げた。
「私たちに、寿司の回し方を教えてください!!」
瞬間、彼の瞳に少年ような光が宿った気がした。
そう、私たちがここにきた理由。それは寿司を回して競い合う、通称スシブレードと呼ばれる競技を彼に伝授してもらうためだった。
彼は少しの間目を伏せた後、奥へと消えていく。
数分後、彼はシャリとネタを持って戻ってきた。
「待ってな。今君たちが回すための寿司を握るからよ」
身体が震えた。
本当に自分たちが寿司を回す日が来るなんて…!
興奮したように拳を痛いほど握りしめる私たちに気づいたのか、彼はふっと微笑んだ。
「良い目をしている。きっと君たちは最高のスシブレーダーになれるだろう」
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