温故知新
はてなインターネット文学賞「わたしとインターネット」
便利な時代になったと思う。
家の中にいながら遠く離れた友人とする会話、買い物に行かずとも頼むことのできる通販、仕事すら在宅ワークが増えている。
会わずとも会える。情報は広く行き渡る。
とても、便利な時代になった。
文学もまた、インターネットを媒体にして広まりつつあるコンテンツの一つである。
私のような素人でも容易に作品を見知らぬ他人に見せることができ、あまつさえ意見交換や感想をもらえたりするのだ。
それに伴い紙媒体であったはずの本は徐々に電子書籍へと姿を変えている。ニュースを新聞ではなくインターネットで見るように、手紙や年賀状という昔からあったやり取りもどこか希薄になったように思う。調べ物や絵を描くこと、写真なども全て携帯一つあれば完結してしまう。文化の進化には目覚ましいものがある。
しかし、その裏で消えていったものに、少しの寂しさを覚えるのだ。
私は本が好きだ。
字を読むこと自体が好きだし、インターネットも勿論活用している。
それと同時に、紙媒体の書籍が愛おしい。
紙の擦れる音、匂い、手触り。
聴覚から視覚から嗅覚から触覚から。
ありとあらゆる感覚を感じ、とてもワクワクするのだ。
私には若干の収集癖があるのだが、本を全巻集めて並べた時の達成感、満足感は心が躍る。
期間限定の美しいイラストの描かれた、或いは特殊な素材の表紙などは思わず手に取ってしまう。たとえそれが既に持っている内容を収録したものであっても、だ。
また、スピン(本についている栞紐)も好きだ。あれがあることでさらに特別感が増す。紙媒体好きのものならある程度理解を示してくれると思っている。
当然電子書籍にも気軽に始められたりお金がかからないなどありとあらゆるメリットが存在する。趣味で始めるものも多いだろう。
生活の多様化によりコンテンツは新しく姿を変えて古いものは少しづつ変化に呑まれていく。
それは良い一面がある一方、どこか無機質さを感じる。
これからも絶対になくならないと言い切れるものなどこの世には存在しない。
けれど時々、変化に呑まれていく古いものに私は思いを馳せてみるのだ。