プールの話

 

今週のお題「忘れたいこと」

 

夏の話である。

幼い私は市民プールへと家族で出掛けた。

家から近いところにあったそこは田舎にしてはそこそこ大きな屋内プールで、派手なアトラクションこそないものの流れるプールやウォータースライダー、サウナなど目玉ポイントは抑えているところだ。

幼い私にとっての悲劇はウォータースライダーに父親と滑った時だった。

子供一人では危ないということで私はウォータースライダーに父親と乗った。

途中は怖いながらも楽しく、滑り台のようにはしゃいでいた。

しかし、終着点へと着いたその瞬間、私は受け身をとれることもなく溺れた。

普通に溺れた。

ウォータースライダーの終着点には小さなプールがあり、そこに滑りながら着地という具合なのだが、如何せん、受け身をとれなかったばかりか私はもともと泳げない。

先にスタスタと歩いていく父親。

そして係員の『そこ、早く出てください』という無情な声。

なんとか必死に這い上がりながら父親についていくが、もうプールのせいなのか涙なのか鼻水なのかもわからない始末。

当時小学校低学年だった私は、それでも一丁前のプライドだけは持ち合わせていたので何もない風を装って鼻の痛みもうつむいてごまかした。

 

気づいてもらえなかったのが一番悲しかった。

彼らには私がはしゃいでいるように見えたのだろう。

 

 

特になにもないそれだけの話だがそれ以来ウォータースライダーどころかプールも好きではない。

トラウマにならないだけましだったが今でも私は泳げないままだ。